上司に秘密を握られちゃいました。

「お疲れ様です」

「あとのふたりは?」

「十八時までの勤務でしたので」

「そっか……」


チラッと腕時計に視線を移した彼は「もうこんな時間か」とつぶやく。
彼も私も、仕事に没頭していると時間を忘れてしまうことが多い。


「さすがだね。きれいに仕上がってる」


彼に褒められると、イヤなこともすべて吹き飛んでしまう。


「もう上がってもいいよ」

「でも、もう少しですし」

「明日手伝うよ。
最近残業続きだろう? きっと彼氏が寂しがってるよ」


公孝さんは「彼女が、の間違いか」と苦笑する。


「駅弁の準備、ひと段落ついたんだ。俺も今日は早く上がれそうでね」


気持ちが一気に持ち上がる。

彼とは……バレンタインのあの夜以来、ずっとすれ違っているから。
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