従順なペットは愛を囁く
3回程人にぶつかった後、とうとう康之さんの後姿を見失う。
壁際に寄り掛かり、ため息を漏らす。まだ少し肌寒い。
2人で観た映画は、ほっこりするアニメーションだったのに、何故か悲しい気分だった。
最近、しっかり笑えていない気がする。
笑うとおにぎりみたいだと言われて、似顔絵まで描かれたから、どんな風に笑えばいいのかよくわからなくなったのだ。
自分がどんな気持ちになっているのか、表現できない。
康之さんの前では尚更そうなってしまう。
甘えたいのに突っぱねられたら嫌だし、悲しくなって泣いたりしたら鬱陶しがられると思うし、はしゃいだりなんかしたら絶対馬鹿にされる。
だけど離れられないでいるのは、ベッドの中でたまに言ってくれる優しい言葉のせいだった。
私の頬を両手で挟んでから、優しいシャワーのように暖かいことばを囁く。
康之さんが好きだと思う。