従順なペットは愛を囁く
「何やってんだよ」
苛立ったような声が聞こえ、顔を上げると康之さんが目の前に立っていた。
さがしてくれたんだ。うれしさに、表情を緩めた瞬間。
「ちっ」
「え……と」
舌うちが胸に刺さるように響く。
康之さんの不機嫌な顔は、私の顔をこわばらせる。
「あのさ、いい大人がはぐれるとかありえないんだけど」
「ごめんなさい」
「どうする? 何か食べる?」
「ええと……」
不機嫌な声音に、何も答えられなくなってしまう。
「誕生日だから、紗那の好きな所行くよ」康之さんの言葉が頭の中を回っている。
考えてきた。雑誌とかネットとかいっぱい見たよ。だけど、何を言ってもこの嫌な空気はなくならないような気がして、何も言えなくなってしまった。