ホルガリズム
薄暗い空が街を包み始め小さな星がひとつ見えた頃、僕らはゆっくりと歩き始めた。


さっきまで足元でじゃれていたしっぽは、いつの間にか姿を消していた。


街灯の無い細道を抜けて辿り付いた小さな公園には、近くの住宅街から運ばれる美味しそうな匂いが風に舞っていた。


名前を聞く事もこの先並んで歩くのも今更ながらためらいを感じた僕は、結局「コンビニへ行く」というベタな口実のもと、この公園で彼女と別れる事にした。ここからなら人通りもあるし、心配する事もないだろう。



鞄を肩にかけ直しながら帰っていく名前も知らない彼女の後姿を見ていると、どこかで会った事があるような気がしなくもなかったが、それより何より、家々から運ばれる美味しそうな匂いが邪魔をして、思い出したのは近所のコンビニのあったかいチーズハンバーグ弁当だった。
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