ホルガリズム
知らぬ間にオトナリサンとなっていた和葉と初対面して3日後の夜。
隣の部屋からは心地よいR&Bが流れていて、それを便乗して聴きながら、僕はベランダでタバコを吸っていた。
まだ9時を回ったばかりだというのにとても静かな夜で、時おり真下を通る車も、遠慮がちに消え去っていくだけだった。
――ゴトンッ
灰皿で火種を潰している時だった。
「あーもうやってらんない!!」
鈍い音と共に彼女の投げやりな声が聴こえた。
思わず左を向いたが、見えるのは2つのベランダを隔てる“非難経路”と書かれた水色の薄い壁だけだった。
続いて彼女のものと思われる足音が聴こえ、それがやがて遠ざかったかと思うと、遠くでガチャンと玄関の閉まる音がした。
隣の部屋からは心地よいR&Bが流れていて、それを便乗して聴きながら、僕はベランダでタバコを吸っていた。
まだ9時を回ったばかりだというのにとても静かな夜で、時おり真下を通る車も、遠慮がちに消え去っていくだけだった。
――ゴトンッ
灰皿で火種を潰している時だった。
「あーもうやってらんない!!」
鈍い音と共に彼女の投げやりな声が聴こえた。
思わず左を向いたが、見えるのは2つのベランダを隔てる“非難経路”と書かれた水色の薄い壁だけだった。
続いて彼女のものと思われる足音が聴こえ、それがやがて遠ざかったかと思うと、遠くでガチャンと玄関の閉まる音がした。