あやしやあんどん

『近いうち事故に遭う』と。


　誰も信じなかった。聞いた本人さえも笑い飛ばした。
　しかし、彼はその4日後、事故に遭い、命を落とした。


　それからだ。サトリが死神だと呼ばれ、皆から嫌がられるようになったのは。


　昔から不気味な子と言われ続けたサトリは別に気にはしていなかったが、白川の死が頭から離れず、口を閉ざしてしまった。


『もう、聞かれても答えないでおこう』


　そう決心していたはずなのに、裕太の問に自然と口が開いてしまった。それは、サトリの無意識だった。
　このとき、サトリは戸惑っていた。裕太に告げることはしないと決めていたはずなのに、何かに操られるように言葉を発しようとした。もしあの時、香苗が止めなかったらと思うと、サトリは酷く恐ろしくなる。
　なぜなら、彼の灯火はまだ消えようとしていなかったからである。



















「いらっしゃいませ。あ」


　サトリは再び来店した。
　鮫島は顔を覚えていたようですぐにサトリに気づいた。


「こ、こんにちは。昨日は、とても美味しかったです」

「良かったです。青山さんが今日も貴女のためだけにあるものを用意していたんですよ」

「え・・・」


　昨日と変わらず落ち着いた空間。昨日と同じ席に案内されたサトリは、鮫島の言葉を聞いて驚く。
　そんな特別な存在じゃないと、サトリは鮫島に言った。


「いえ、ここに来店されるお客様はみんな誰もが特別なのですよ」


　と、鮫島は店内を見渡す。他に誰か来ているのかとサトリも店内を見渡すが誰もいなかった。
　サトリが不思議に店の中を見渡していると、また昨日と同じく店の奥から優しげな男の声が響く。


「鮫島くん。お願いします」

「はい。青山さん」


　鮫島は呼ばれ、店の奥へと消えた。