君をひたすら傷つけて
「そうね。おばちゃんとかおじちゃんとか分からないし。リズちゃんならいいと思う。でも、呼ぶようになるのは随分先だと思うけど」

 まだ、妊娠したばかりの状況で、生まれて話せるようになるまで、数年の年月が掛かる。その間、リズは本気に『リズちゃん』と言わせるつもりかもしれない。ずっと一緒に居る未来を想像して顔が緩む。

「そこ。雅。可笑しいわよ。敬称なら、『お姉さん』でしょ。まりえもそう思うでしょ。リズちゃんかお姉ちゃんかの二択よ」

 まりえは呼び方は心底どうでもいいようで、さっさと自分の席に座り書類の整理を始めた。そして、チラッと私とリズを見て言った。

「別にどうでもいいと思うけど、雅がどうこうより、子どもにリズが『お姉ちゃん』って教え込めばいいだけでしょ。刷り込みすればいいでしょ。その後はその子次第。忘れられないように時間を見つけて会いにいけば、どうにかなると思うけど」

「それは明暗ね。溺愛して、私無しで生きられないようにしてやる」

 私無しって……。

「それって、生まれる前から叔母バカ??」

 そんな話をしながら、私は幸せだと思った。泣きたくなるくらいに幸せだった。

「ありがとう。リズ」

「当たり前。さ、そろそろ仕事に入ってくれる?馬鹿みたいに仕事があるから。エマが帰ってくるまでにこなす仕事が多いから、雅にも現場に出て貰うから」

「うん」

 やっと自分の場所に戻れる気がした。
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