君をひたすら傷つけて
「明日はオフの予定です。何か仕事が入れば、仕事になりますが、今のところ何もないです。ただ、先週の撮影のデータが出来て、不備があれば、またスケジュールに組み込まれるかもしれませんが」

 慎哉さんは頭の中にスケジュール帳が組み込まれているのか、細かなスケジュールを伝えていく。

「とりあえず、今のところはオフか。久しぶりのオフだな。里桜は仕事だろうから、午前中はゆっくりして、昼から食事でも作って里桜が帰ってくるのを待つのもいいな。新しいレシピでもサイトで探して試すのもいいな」

「それはいいですが、ドラマの本読みが近いので、セリフを覚えるのを忘れないでください」

「分かっている。でも、殺人事件のドラマのセリフを覚えながら、料理って微妙」

「料理は料理。本読みは本読みです。頑張ってください」

 そんな話をしていると篠崎さんのマンションに着いた。篠崎さんはマンションが目に入ると嬉しそうに微笑む。この微笑みはカメラには向けられない里桜ちゃんだけの微笑みだと思う。

「じゃ、お疲れ様」

 ウキウキという言葉が似合う篠崎さんは背中に幸せを背負ってマンションに中に消えていく。その後姿を見ながら、慎哉さんは穏やかに微笑んだ。

「雅。明日、少し時間あるか?」

「明日は事務処理だけだから、昼からなら大丈夫だけど、何をするの?」

「義哉の墓参りに行こうかと思って。どうだろ。昼からでいいけど」

「そうね。二人で行くのは久しぶりね」

 私は妊娠した時に義哉に相談に行っていた。でも、二人で行くのは久しぶりだった。
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