君をひたすら傷つけて
「私も早く帰りたいので、そのためにも撮影頑張ってくださいね」

 私が篠崎さんにそういうと、篠崎さんはくるっと振り向いて、ピースサインをする。見た目の端正さとのギャップに落されそうな無邪気な笑顔だった。

「了解。雅さんと高取のためにも頑張るよ。デートとかあるだろうし」

「冗談はそのくらいで。スタッフが待ってますから。衣装に着替え終わったら、ヘアセットをし直しますから」

「了解!!冗談じゃないけど、ま、頑張るよ」

 篠崎さんは新しい衣装に着替えると、綺麗な微笑みを浮かべながら、ライトの中に入っていく。私はそのライトの中に一緒に入ると、櫛を取り出し、流れる髪の束をまとめた。目を閉じる篠崎さんは本当に綺麗で、結婚してからも人気は陰ることなく、新しい仕事をこなしていく。

「オッケーです」

「さ、がんばろ。お願いします」

 微笑む篠崎さんを見ているとその姿を慎哉さんは見つめている。私の視線に気づくと、フッと微笑む。幸せだと思った。答えは自分の中にあると思う。その答えのヒントは素直な気持ちと、相手を思いやる気持ち。

 それを篠崎さんと里桜ちゃんは教えてくれた。

 篠崎さんは有言実行で、あの後、撮影を一発で決めてくれたので、想像よりも早く私はスタジオを出ることが出来た。エマに連絡をしたら、直帰していいということだったので、私は慎哉さんと篠崎さんと一緒にマンションに戻ることになった。慎哉さんの運転する車の助手席には私が座り、篠崎さん後部座席だった。
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