君をひたすら傷つけて

婚姻届提出

 婚姻届を提出する日、私はいつもよりも少しだけ早く目が覚めた。遠足に行く小学生でもあるまいし、自分で自分が可笑しくなる。でも、私は目覚まし時計もなしに目を覚ました。未明の空からの光は弱く。もう数時間もすればこの部屋も明るい光で満たすだろう。

 今日の午前中に私は慎哉さんと一緒に婚姻届を提出して、夫婦となる。たった一枚の紙切れだけど、その紙の持つ意味は大きい。私は慎哉さんのお嫁さんになるという正式な届けになる。ベッドの中で慎哉さんの腕の中で目覚めるようになって、慣れなくて、自分の身体を抱き寄せる逞しい腕にドキッとする。

 慎哉さんはまだよく眠っていて、連日の仕事の疲れが溜まっているのか、まだ起きる気配はない。オフなのだから、一応午前中に区役所に行くと言っていたけど、別にそれが午後になってもいい。私は慎哉さんを起こさないようにリビングに行くと、カーテンを開けた。

 想像していたよりもいい天気で、私は少しだけホッとする。大事な日は快晴とまではいかなくても晴れであって欲しいと思う。

「今日、結婚するんだなぁ」

 ソファに座ると自分の左手の薬指に光る指輪が見える。慎哉さんの私に対する思いがそこにはある。

 テレビを付けて、コーヒーメーカーをセットすると、じわじわと今日という日が自分にとって大事な日になると思いが募りだした。慎哉さんと一緒に暮らしだしたのは、セキュリティが原因だったけど、今では一緒にいることが日常になっている。
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