君をひたすら傷つけて
 リズが準備してくれた荷物の中には見慣れない袋があり、その中にはシルクの下着が入っていた。その下着は見覚えがあり、リズがプレゼントしてくれたものだった。シルクの下着は扇情的ではなく、ごく普通の形をしている。ただ、レースは最高級だし、生地は柔らかいシルクで出来ている。肌触りは優しく、繊細で上品だった。

『きっと、この下着の方が高取さんは気に入ると思うわ。スケスケでよくあるようなベビードールのような下着は彼の好みじゃない。だから、普通の方がいいのよ』

 そう断言して、リズとエマはニコニコ笑いながら、私に包みを手渡した。私が慎哉さんと結婚することが決まってすぐにフランスに取り寄せたものだと言ってて、箱から出して、綺麗だけど可愛すぎると思ったものだった。それが開かれたスーツケースに入っていた。

「リズ……恥ずかしさが増すじゃない」

 シルクの下着を着て、ホテルのバスローブを着ると私はぐるぐる回る思考に私は見切りをつけて、バスルームから出た。

 リビングではパソコンを開き仕事をしている慎哉さんの姿があった。軽快にキーボードの上を指が踊っている。真剣な表情がパソコンの画面から私に向けられている。

 普通なら結婚式のの夜に仕事を持ち込む夫に妻は激怒するかもしれないけど、私はそんな気にならなかった。それどころか私は妙に落ち着いた。さっきまで浴槽の中で膝を抱えていた私はどこに行ったのだろうかと思うくらいに落ち着いた。

「仕事していたの?」

「……。悪い。どうしてもしておきたいことがあって」

「別に怒ってないわ。らしいと思っただけ。私に気にしないで、仕事をしていいわ。私も仕事しようかな」

「スケジュールの確認をしていた」
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