君をひたすら傷つけて
 私が憧れていたイメージに引き寄せられるように車を降りると、慎哉さんも車から降りて、私の肩を抱く。真っすぐに教会の階段を二人で登ると、木のドアを開けて、中に入った。中は暗幕が引かれてあるからか、遮光のため薄暗い。でも、その一番奥の祭壇だけは降り注ぐ窓からの光照らしていて、イエス様の像を優しく照らしていた。

「入って大丈夫なの?」

「ホテルを出る前に連絡はしているよ。だから、ドアを開けていてくれたんだよ。カーテンを開けたりするのはダメだけど、少し見学するくらいは大丈夫。ここはどう?気に入ったら、予約入れて帰らないか?」

 妊娠して、出産するから結婚式は無理だと思っていた。婚姻届を提出して、ホテルで一泊しただけで終わりだと思っていた。でも、慎哉さんはきちんと結婚式まで考えてくれていた。

「出席は親族と仲のいい友達だけ、ドレスはオーダーまでは出来ないけど、リズさんやエマさんの伝手でいくらでも雅に似合うのが準備出来るらしい」

「リズに結婚式のことを言ったの?」

「言ったというか、前に雅の件で何度かリズさんに会いに行った時に、『迎えに行くなら中途半端なことをするな』と言われたから、『結婚を前提に考えている』と言った。そうしたら、リズさんから『結婚式もするか?』と聞かれて、『雅が望むなら』と答えた。それで、雅が結婚式を望んだら、リズさんがドレスも準備するし、ヘアメイクも自分ですると言っていた。だから、結婚式をするにしても心配することないよ」
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