君をひたすら傷つけて
 ホテルから車でゆっくりと街中にドライブに出かけた。どこにいくのかと、思いながらも、ただ、適当に車を動かしているだけのように思ったのは、いつもは必ずつけるナビが動いてなかったからだった。慎哉さんは知っている道でも必ずと言っていいほどナビを付ける。それは道を調べるのもあるけど、混雑状況を調べるためでもあった。

 でも、今日は緩やかな音楽が流れるだけになっていた。

「どこに行くの?」

「雅と一緒に行きたいと思っていたところだよ。ドライブがてら行ってみないか?身体がキツイなら又にするけど」

「大丈夫。ナビが動いてなかったから、適当に運転していると思っていた」

「前に撮影で近くに行ったことがあるから、ナビが無くても大丈夫なんだ。それに今日は交通状況を調べたりせずゆっくりとドライブしたいと思っている。雅。お茶でも飲むか?」

「ううん。大丈夫。喉が渇いたら言うから。ここから時間かかるの?」

「そんなに時間は掛からない」

 車を走らせること20分くらいが経った頃、慎哉さんの運転する車は荘厳な石門の中に入っていった。あまり広くない駐車場の奥には芝生が広がっていて、目の前には小さな教会が佇んでいた。教会まで続く石畳の横には綺麗な花が咲いている。青い空に十字架が眩く輝いていた。

「ここは?」

「俺が雅と結婚式をしたいと思っている場所だよ。さすがにイタリアの教会まではいけないけど、この教会はいわゆる結婚式場が運営している教会ではなく、本当の教会だよ。だから、豪華さは無いけど、前に来てみて、いいなって思った。
 雅が気に入ったら、一年後、ここで結婚式を挙げたいと思っている」
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