君をひたすら傷つけて
「頑張って歩きます。今日は結婚おめでとうございます」

「ありがとう。叶くん。それと、ベールが長い分、重いと思うからよろしくお願いします」

「大丈夫です」

 私は準備が終わり、控室に入ると、そこには私の大事な子どもを抱いたリズの姿があった。さっきまで起きて動き回っていたのが嘘のように、リズの腕の中ですやすやと眠っている。綺麗な発音のフランス語で子守唄を歌っている。

「小春は寝ているの?」

「さっきまで起きていたけど、興奮しすぎて寝ちゃったわ。なんて可愛いのかしら。もう、天使よ。天使!!」

 私が産んだのは女の子で名前は小春と名付けられた。自分の娘に言うのも可笑しいけど、可愛らしいと思う親バカだと思う。そして、私以上に、伯母バカを炸裂させているのが、リズだった。ただでさえ、愛情が溢れるリズは仕事の合間に小春に愛情を注いでいる。半年で仕事復帰をしたけど、保育園に入れずにいて、事務所で育児をしながら、仕事をした時に小春の世話に、胸の奥が何かでカチッと開いたとリズは言う。

 小春の今日の衣装は、リズがフランスから買い付けてきたもので、その値段は知らないけど、フワフワのスカートが広がる、リズ曰く『天使のドレス』で、本当に天使のような姿だった。

「式の間、お願いね」

「もちろんよ。本当なら雅のお母さんに抱かれるのがいいのかもしれないけど、お母さんは今日は雅の母親だもの。だから、私が抱っこしておくわ」 
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