君をひたすら傷つけて
 音楽が流れ、静かにドアが開くと、私は一礼をしてから教会に入った。

 お父さんの腕に引かれて、教会に入ると神父様の前に白のタキシードに身を包んだ慎哉さんの姿がベール越しに見える。平静を装っているけど、あの表情は自分の溢れそうな気持ちを抑えている。一年前は分からなかったけど、今では分かるようになった表情の変化が私の妻レベルのアップした証拠かもしれない。

 溢れる愛を抑え込もうとしているように見えるのはきっと私だけ……。


 優しい微笑みに向かって私は一歩、また一歩。歩き出す。

 このドレス姿を見るのは初めてだから、少しは驚いてくれるかしら??
 少しでも綺麗だと思ってくれるかしら??

 優しい微笑みに向かって私は一歩、また一歩。歩き出す。

 

 ドキドキしながら、目の前に立つと、慎哉さんは一瞬、目を細め、甘い表情を浮かべた。お父さんから手渡されて、私が慎哉さんの腕を取ると、慎哉さんは耳元で私だけに聞こえるように囁いた。

「綺麗すぎて、息が止まるかと思った」


 The end

 
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