君をひたすら傷つけて
 こんな風に背中から強く抱き寄せられるとドキドキする。背中に感じる強い温もりが愛しいと思うし、私が義哉に愛されていると思う。こんなことを言ったら義哉は怒るかもしれないけど愛されることで傷つくならそれでいい。もっともっと傷つけて欲しいと思う。でも、私が義哉に対する気持ちは揺るがないと思うし、こんな風に抱きしめられていると思いは深まるばかりだった。

 背中に感じる温もりと共に義哉の生きている証である鼓動が愛しい。


「雅を傷つけるのが分かっているのにこんな風に抱き寄せたくなる」

 そう言いながら、義哉は腕の力を緩めると、そっと私の身体を反転させ、真っ直ぐに私を見つめると優しく頬に手を触れさせた。

「雅。好きだよ」

 私は義哉の言葉に答えることなく、義哉の首に腕を回した。そして、ギュッと背中を伸ばし、私は義哉の唇に自分の唇を重ねた。大胆な行動かもしれないけど、私は自分の心のままに動いてしまった。そんな私のいきなりの行動に驚き、一瞬目を見開いた義哉は腕を私の背中に回すと、グッと引き寄せ右手を私の後頭部に回し、髪に指を絡めたのだった。


 自分の鼓動がきっと義哉に聞こえていると思う。激しく打ち鳴らす音を聞きながら恥かしいけど収まる気配はなかった。

 
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