君をひたすら傷つけて
 一生懸命勉強をしていても不安が付き纏う気がする。多分、受験生の誰もがそう思うのだろうから私だけではないと分かっている。それでも受験が迫るギリギリの今となっては何もかも足りない気がしてならない。何がよくて何が悪いのか、焦るばかりで塾と学校と家を行ったり来たりしているうちに自分の行く先を見失いそうだった。


「確かにね。受験生に自由はないって感じ?」


「さやかは何で推薦にしなかったの?さやかならいくら推薦の話はあったでしょ。わざわざ受験しなくても良かったのはずなのに勿体ない気がする」


 さやかも私と同じ受験組だった。推薦という楽に行ける切符を自分から破り捨てた強者だと私は思う。勉強でも推薦は取れただろうし、スポーツ推薦という道もあったはずなのにさやかは受験をするという。先生の再三の説得にも頷かず、自分を通すところは尊敬してしまう。


「やりたいことがあるからね。受験だけを考えると推薦の方がよかったかもしれないけど、もっと大人になった時になんであの時頑張らなかったのだろうかと後から自分に後悔したくない。私が行きたいと思う大学から推薦がくれば良かったけど、そうは上手くいかないものよ」


 さやかの夢は教師だった。それも養護関係の教師だから、大学選びは慎重にしないといけないらしい。険しい道のりだと本人も分かっているのだろうけど、自分の夢を貫くために必死に頑張っている。


 私のようにしたいことを探しに大学に行こうというのとは違う。

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