君をひたすら傷つけて

二か月の恋

 義哉はいつも笑っていた。自分に残された時間がないのを知っているのに、いつも笑っていた。

 最初から二か月しか残されてないと聞いていたから、いつかこんな日が来るかもしれないと思っていた。でも、それが今日だとは思いもしなかった。初めから終わりが決まっている恋だと自分でも覚悟していたはずだけど、義哉は元気になるかもしれないと淡い希望を抱いてた。

 それは希望であって現実ではない。実際に義哉は永遠の眠りについてしまった。

 私は義哉の眠る布団の横に座ると零れる涙を拭いもせずに泣いた。我慢して声を抑える私にお兄さんはゆっくりと背中を撫でてくれた。

「我慢しないでいいよ」


 お兄さんの優しい言葉に堰を切ったように押さえていた声が溢れた。自分の鳴き声が和室に響く。でも、一度堰切ったものが止められるはずもなく。私はそのまま泣き続けた。義哉の眠る布団を前にしてボロボロと泣く私の傍にお兄さんはずっといて、泣く私の背中をあやすようにゆっくりと撫でる。その優しい手の動きが今は泣いていいのだと教えてくれる。我慢しなくていいと…。


 ただひたすら義哉を思い泣いた。


 出会ってから今までの出来事が淡い雪が解けるかのように心に浮かんでは消えていく。でも、義哉の笑顔だけは全く消えない。笑顔だけが私の心に残ったままだった。
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