君をひたすら傷つけて
 泣いても泣いても涙は枯れることなく流れ出る。これだけ泣いたのにまだ泣き足りないかのように涙が溢れてきた。この涙の全てが私の義哉を思う気持ちの全てだった。

 初めての恋だった。


 出会ったのは高校三年の三学期。

 隣の席になったのは偶然。

 姿を見るだけでドキドキして、一緒にいると温かい気持ちになって、触れるともっとドキドキが止まらなくて、胸の奥がキュッと苦しくなることもあった。

 私は恋をした。

 そして、それはたった二か月の恋だった。

 私が望んだのはずっと傍に居たいと言うことだけ。

 義哉を失った私はどうやって生きて行けばいいのかさえ分からない。それくらいに私の全ては義哉に向けられていた。


 大学に行って、毎日義哉の病院に通って、そのうち義哉も調子が良くなって。そんな淡い夢を抱いていた私を現実は切り裂いた。苦しい時は義哉が優しく包みこんでくれた。でも、今は義哉はいない。私をそっと抱きよせてくれる腕もない。義哉が居なくなってしまった現実を私は受け止めることなんか出来ないから、私は義哉の眠る布団の横に座り、ポロポロと涙を零すしかなかった。

 私を愛してくれた人は静かに眠っている。


 どのくらいの時間が過ぎたのか、泣き過ぎた私は目が痛くなり、喉も擦れてきていた。和室には私と義哉。そしてお兄さんだけがいて私の収まりかけた泣き声以外は静寂だった。

 
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