君をひたすら傷つけて
 自分の教室に入るとコートを脱いで教室を見回した。零れるのは小さな溜め息の連鎖でここから逃げたくなる。でも、逃げれないと分かっている私は観念してカバンの中から参考書を取り出すと眉間に皺が寄ったのを感じた。もうすぐセンター試験を控えている今、少しの時間も無駄には出来ないけど、現実逃避もしたい。そんな気分だった。


「雅の横で私もしようかな。数学しようよ」


 さやかの開いたのは私のバッグの中にもあるものだった。でも、分からない箇所が多すぎて付箋が山のように立っているのは最初の方だけで後ろの方はほぼ新品状態だった。この状況でセンター試験を受けるなんて無謀ではないかとさえ自分でも思う。この付箋を全部外し、新品の部分を書き込みで汚せるのだろうか?


 時間はいくらあっても足りない気がした。


「分からないものばかりだから滅入る」


「でも、必須だから逃げられない」


 さやかとは進路は違うけどセンター試験を受けるのは一緒。まずは一番の関門だった。ここでどのくらいの成績を取れるかによって進路は大きく変わる。


「もう日にちがないから焦る。焦ってもしょうがないのは分かっているのに」


 そんな私の言葉にさやかはクスクスと笑った。


「焦っているうちはいいわよ。諦めたら終わりだもん」


 まだ、諦めることは出来ない。どこに道があるのか分からない私は最後の最後まで足掻くしかない。でも、足掻いた先に本当に自分のやりたいことがあるのだろうかと思ったりもする。先が見えないということはこんなにも不安だった。

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