君をひたすら傷つけて
 お兄さんは今からもご両親について色々な手続きをしないといけないはずなのに、私にまで気を使ってくれている。その気持ちをありがたいと思うけど、今は義哉の傍に居てあげて欲しいと思った。私から見ていて羨ましくなるくらいに義哉とお兄さんは仲がいい。だからこそ最後の最後までお兄さんには義哉の傍から離れないで欲しいと思うのが私の気持ちだった。


「お気持ちだけで十分です。義哉の傍に居てあげてください」

 お兄さんは私の顔を見ると、真剣な中に優しさを滲ませた。


「ありがとう。今から行くよ。藤堂さんは帰りついたらメールしてくれる?義哉も心配するから。それと藤堂さんが言うように最後まで義哉の傍にいるよ。今日は本当に来てくれてありがとう。義哉も最後に君に会えて喜んでいると思う。それとこれ」


 お兄さんは自分の胸元から一通の封筒を私の方に差し出した。淡い水色の封筒に私の名前が書いてある。繊細で綺麗な文字だった。何度も見た義哉の文字がそこにある。封筒の裏なんか見なくても分かる。


 これは義哉が私に残したもので、最初で最後の手紙だろう。
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