君をひたすら傷つけて
 綺麗な文字が目に飛び込み、私の名前を見ただけで私は涙を零す。そして、義哉の思いを受け止める心が決まった。ゆっくりと開くとそこには義哉の思いが込められていた。


『雅へ。

 この手紙が雅の手に渡る頃には僕はもう雅の傍に居ないんだろうね。

 僕は雅に会えて幸せだった。

 もっと一緒に居たかったと思っただろうけど、自分の今の身体の状況から考えてもそれが無理なことも分かっている。死というものを受けれることが僕とっては大事なことだった。何度もこんな風に生まれたことを恨んだし、もっと生きたいとも思った。

 なんで自分だけがこんな思いをするのかと思った。

 でも、それは自分の力ではどうしようもないことで受け入れ、残り少ない時間を大事にしようと、少しでも前向きに歩いていきたいと思った。そんな僕に自分の命がもうそんなに残ってないと分かった時、最後に思い出が欲しくて親に我が儘を言って遠縁の経営している高校に編入させて貰うことにした。

 体力を考えると病状的にも許されないことだと分かっている。それでもベッドの上で全てを終わらせるのが嫌だった。思い出が欲しかった。


 これが僕の最後の我が儘。


 束の間でいいからの学生生活を出来ればいいと思った。長くても二か月ほど…。多分それくらいしか僕の命は持たないだろう。それだったら、誰の記憶にも残らずに思い出だけを貰えると思ったんだ。
< 163 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop