君をひたすら傷つけて
 友達はともかく、私はもう恋愛するつもりはない。心の中に義哉がいるから私は恋をするつもりがない。でも、お兄ちゃんは私とは違う。

 素敵な人と出会って、幸せになって欲しいと心から思う。そのために私は傍に居ない方がいいかもしれない。恋愛感情がないとはいえ、恋をするには私は邪魔だった。一か月に一度、仕事の下見として一緒に食事に行く。仕事の一環ではあるけど、お兄ちゃんは私が新しい世界に歩き出さないと心配して自分のことは後回しにする。


 初めて会った時は怖いと思った。でも、一緒の時間を過ごすと見た目は冷たそうだけど、お兄ちゃんはとっても優しい。顔も整った方だし、博識で温厚。私にとっての自慢のお兄ちゃんだ。だからこそ、素敵な人と出会い、幸せになって欲しい。


 お兄ちゃんと食事をした次の日、私はサークルに入ることにした。大学二年になって入るのに躊躇はしたけど、そんなのはあんまり関係ないサークルだったみたいで、私は年度が変わると同時に入ったのでスムーズに入って行くことが出来た。

「雅と一緒に楽しめるのは嬉しいよ」

 そう友達は言ってくれた。

 一年生の新歓と共に私の入会の祝いもしてくれることになっていて、気持ちは乗らないけど参加してみることにした。慣れない人の波に揉まれながら着いた先は繁華街にある居酒屋の一室で、そこにはサークルの人が十人以上はいて、思い思いにビールや酎ハイを飲み、中にはウーロン茶を飲んでいる人もいた。
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