君をひたすら傷つけて
 初めて参加したサークルの飲み会だけど、その中で私は馴染めないでいた。最初は傍に居てくれた友達も今は他のサークルの人と楽しくお酒を飲みながら話している。何人も話しかけてくれるけど、話している内容があまりにもみんな違いすぎてどこにも入って行けなかった。

 サークルで色々な人と話すと義哉との違い、お兄ちゃんとの違いを感じる。

 私は歓迎ということで真ん中の方に座ってはいるけど、話しかけられたら応えるというだけの私の周りは静かになり、帰りたくなっていく。でも、今日は最後までここに居るつもりで参加した。そんな時、私の横に一人の男の人が座ってきた。座ってくるなりフワッと香水が香る。

 煙草とお酒と…香水の匂いは入り混じって凄いことになっている。


 黒の足に沿うようなジーンズに白のシャツ。胸元にはネックレスが見える。髪は漆黒で額から後ろに流されている。耳には金色のピアスが見えた。視線を上げるとそこには笑顔。派手な印象の彼の笑顔は優しかった。


「藤堂雅ちゃんだよね。俺、レンジって言うんだ。このサークルの副代表ってことに一応なっている。雅ちゃんと同じ学部の一つ上だから。試験の過去問題とかあるし、いろいろと相談に乗れると思うよ。試験前には言ってね。レポートとかノートもコピーあるからね」


 綺麗な顔に漆黒の髪。アーモンド型の瞳は楽しそうに居酒屋のライトの下揺れている。


 すらっとした体躯にぴったりとした服を着ている彼はさっきまで女の子の集団の中に居たはずなのに、私の横に来ていきなり話し出したのだった。
< 180 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop