君をひたすら傷つけて

転機

 今年も春から夏へと向かう季節がやってきた。肌に感じる湿度が徐々に雨の装いを纏っていくと季節の移り変わりを感じさせる。今年の春は色々と忙しく、死にたいくらいに苦しかった去年とは全く違っていた。

 義哉を忘れたわけではないけど、それでも私は少しずつ前に進んでいる。慣れなかったサークルにも自分の居場所を見つけることが出来た。一歩踏み出したのがよかったのか、一年の時よりも私の周りには格段に人が増えている。

 しずか先輩とレンジ先輩とも一緒に時間を過ごすうちに慣れた。

 しずか先輩は面倒見がいいし、レンジ先輩は底が見えない人だけど、思ったよりも優しいし、派手な外見とは裏腹に思いやりもあったりする。ちょっと強引なところもあるけど、最初に感じた嫌悪感は消えていた。これがお兄ちゃんの言っていた『新しい出会い』だと思う。

 サークルには色々な人がいて、驚くことも多かったけど、慣れたことにより自分の目で見ると、結局は自分の中で壁を作り、自分で拒絶していただけだった。

 サークルに入ってまだ二か月だというのに、何回か飲み会にも参加した。最初は新入生歓迎の飲み会だったけど、二回目と三回目は先輩たちの気まぐれで始まった。

『なんか飲みたい気分じゃない?』

 こんな言葉と共に始まる飲み会は強引に連れて行かれるわけではなく、自然にその中に私も居ることが出来た。新入生歓迎の飲み会でお兄ちゃんが私を迎えに来たことで色々な意味で、本当に楽しめるようになっていた。
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