君をひたすら傷つけて
 大学の方は私の返事と共に急速に動きだした。


 留学を決めてからの私の生活は毎日が100メートル走でもしているような感じで目が回りそうだった。ある程度の用意は出来ていたとはいえ、一年間の留学はそう容易でもない。高校の修学旅行で使ったパスポートはあったのは幸いだったけど、何日かの修学旅行とは違う。荷物のほとんどをやっとの思いで送ってしまうと少しだけホッとした。

 お兄ちゃんに連絡をしないといけないと思いつつも、あまりの忙しさに時間を作れずにいた。クラスの友達やサークルの友達とも食事に行ったり、家族と一緒に食事に行ったりと忙しかった。たった一年だけどされど一年だった。

 後は私が二日後にはフランスに行くだけになっていた。


 お兄ちゃんからはメールが着ていて、『フランスに行く日は仕事で見送りにいけない』ということだった。どうしても仕事の都合で見送りにいけないと残念そうなメールが届き、そのメールの前後には幾度も『フランスで気を付けるように』とか『元気で』とか私を労わる言葉が溢れている。

 もう一度、フランスに行く前に会いたいと思ったけど、そんなのは我が儘。お兄ちゃんも私から解放してあげないといけない。そして、日本で過ごす最後の一日。夜は両親と一緒に食事をすることになっていた。


 それまでの間、私は自分の行く場所を決めていた。

 私が行くと決めた場所は義哉の眠る場所だった。途中の花屋で明るい色の花を選んで義哉のお墓に向かう。菊とかの仏花を選ばなかったのは少しでも義哉に花の色を楽しんで欲しかったから。明日からフランスに留学する私は義哉の元に来ることが出来るようになるのは一年先になるかもしれない。
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