君をひたすら傷つけて
 義哉が亡くなって一年。

 不安定な私をお兄ちゃんは心配していたと思う。自信はないけどもうそろそろ卒業しないといけないと思っていた。この留学はいい意味でお兄ちゃんを自由にすることが出来るかもしれないと思った。離れることが悪いことばかりではない。

「うん。約束ね。忘れたら怒るから」

 そう言いながらも先は分からないとも思う。お兄ちゃんのことを大事に思うから、お兄ちゃんを私の心配から解放されて欲しい。寂しいけど、お兄ちゃんの幸せを一番に考えて欲しいとも思う。


「ああ。もちろん忘れないよ。雅が忘れても私は忘れないよ」

「お兄ちゃんも仕事頑張ってね。新しい人と一緒に仕事をするんでしょ」


「仕事は頑張る。今までは義哉のためにと思って頑張ってきたけど、これからは自分のために働いてみようと思う お兄ちゃんの話を聞きながら、前に義哉が話してくれた言葉を思い出していた。『兄さんは僕のために今の仕事を決めたんだよ。』その言葉をどんな思いで義哉は口にしたのだろう。義哉のことを思うと今も胸が痛い。


「うん。そうだよ。お兄ちゃんも頑張って」

「頑張らないとな。雅には負けられない」

 私はお兄ちゃんに向かってニッコリと微笑んだのだった。
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