君をひたすら傷つけて
「始業式があるから講堂に行かないと」


　高取くんの言葉にさっき先生に言われた言葉を思い出したみたいだった。教室を見回すと、クラスの殆どが講堂に向かっているみたいで、高取くんの周りにだけ人が居るのみになっていた。時間は思ったよりも過ぎていてこの分だったら講堂での始業式が始まった後で後ろから入らないといけない。


　新学期早々目立つことはしたくなかった。私もだけど、新入生の高取くんにとってみれば、転入早々に目立ちたくはないに決まっている。それでも、この状況だったらきっと目立つことになるだろう。


「ねえ、高取くん。講堂まで一緒に行きましょう。転校してきたばかりで場所もわからないでしょ。私たちと一緒に行った方がいいかも」


　そんな女の子の言葉に彼はニッコリと微笑んで、誰もが頷くと思った彼の口から零れた言葉は全く違っていて、横で聞いている私の方が彼の方を見てしまった。


「ちょっと職員室に行ってから行くよ。みんなが遅れると大変だから先に行っていて」


「でも…。迷わない？」


「うん。大丈夫。先生に聞いてから行くから。じゃあ。後から講堂でね。本当にみんな親切にしてくれてありがとう」


　彼がそういうと、仕方ないという雰囲気を出しながらも女の子は散り散りになっていき廊下を講堂に向かって歩き出した。そんな様子を私は自分の席から見つめていて、綺麗な顔の男の子も本当に大変なものだと思った。

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