君をひたすら傷つけて
 高取くんのことを殆ど知らない。でも、その言葉の一つ一つに嘘はなく、全部本心であるとしか思えないから怖い。あまりにも屈託なく言う『可愛い』と言葉を素直に私は受入れてしまう。普通の男の人に言われたら拒絶反応してしまいそうだったけど、素直に私は言葉を受け入れていた。


「ありがとう。嬉しい。そんな風に思ってくれて」


「別にお礼を言われることしてないよ。本当に思っただけだから。さ、本当に始業式に遅れたら申し訳ないから職員室までお願いしていい」


「うん。急がないとね」


 職員室までの廊下を歩きながら話をしていて思ったのは、本当に高取くんは同じ年なんだろうかということだった。会話の内容、その全てに博識で私の話を聞きながら、リズムを壊さないように色々な話をしてくれる。余りにも落ち着いているから本当にいくつだろうと思ってしまったほどだった。無垢で子どものように屈託のない表情を浮かべたかと思うと、急に落ち着いた男の人の表情を見せる。

 
 捉えどころのない男の子。それが私の高取義哉に対する印象だった。


 教室を出て、職員室に向かう。他の生徒が講堂に向かう反対側に向って歩く私と高取くんは他の生徒からジロジロ見られている。でも、まったく高取くんは気にしていないようだった。


 私は職員室に向かい歩きながら、ついでに特別教室の場所も教える。学校の説明する私を見る高取くんの瞳はとっても優しかった。

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