君をひたすら傷つけて
「優しいのはお兄さんと似てるね」


「そう?でも、兄に似れるなら嬉しい。ずっと優しくて強い兄に憧れている。いつか追いつきたいと思うけど、兄は自分よりももっと先を走っていて、いくら頑張っても追いつけないんだ」


「憧れるのはいいことだけど、高取くんは高取くん。お兄さんはお兄さんでしょ。比べないでいいと思う」


 職員室までこの角を曲がってすぐというところで、高取くんは私の方を見てニッコリと笑った。


「藤堂さんは本当に優しいね。その優しさに甘えてもいい?休み時間にもっと学校の案内して貰えないかな。休み時間がダメだったら、放課後でもいい。藤堂さんの案内ってとっても分かりやすいし、一緒にいてとっても楽しいんだ。学校を歩いて回るなら楽しい方がいいと思うんだ」


 高取くんのいきなりのお願いに吃驚してしまった。職員室に行くついでに校内案内をしただけのつもりだったのに、そんなに個別に案内なんかしたら、高取くんのファンクラブでも作りそうな勢いのクラスの女の子に恨まれるのは必至だった。出来ればこの時期に面倒事に巻き込まれたくなった。


「クラス委員に頼んだほうがいいと思う。それがクラス委員の仕事だし」


「隣の席のよしみでってことでお願い出来ないかな。俺、結構人見知りだし、自分で壁を作ってしまうけど、藤堂さんと一緒なら楽しい。だからどうしても頼みたいんだ」


 正直どうしようかと思った。実際にクラス委員も自分の受験のことで精一杯だから学校案内なんかしてくれるか分からない。自分で言っておきながらクラス委員が絶対出来ると言いきれなかった。
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