君をひたすら傷つけて

心の奥を見透かす人

 新しい生活は刺激に満ちたものになっていた。リズの手伝いに対しての気持ちが変わったと思う。リズは私の上司であり、師匠でもある。専門学校もいってはいるけど、そこで習うのは服に対する基礎知識やだけで実践はリズの手伝いをしながら学び取っていくしかなかった。

 それは言葉の壁を持っている私には厳しい修行でもあった。リズは妥協しないので専門学校に入ってからの方が格段に求めることが厳しくなっていて、真剣に私を育てようと思ってくれていることが分かっていた。だから求められる要求も厳しくなる。分かっているけどその思いに応えるのは難しい。

 それは秋のコレクションのリハーサルの時の事だった。私がまだ専門学校に行き初めてすぐの頃で、私の中にはまだ甘えもあった。イメージが固まらないのかデザイナーとスタイリストのリズは本番を数時間に控えた時間にも拘わらず根を詰めたリハーサルが行われる。コレクションはデザイナーの物。でも、それをどうやってイメージを形にするかはスタイリストの仕事。

 朝も早い時間からずっと通しのリハーサルが行われていた。

 音楽も照明も本番さながらに行われる。そして、細かく確認しながらモデルは何度も華麗なウォーキングを魅せる。華やかさの中にもデザイナーの意図する世界を演出するのは難しい。

 私は専門学校に通いながらも一流のコレクションにスタイリストのアシスタントとして参加していた。コレクションのアシスタントをしたことは勿論あるけど、自分の中で専門学校に通っているのだから、前とは違った動きも出来るのではないかと自分では思っていた。

 でも、現実は余りにも残酷だった。
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