君をひたすら傷つけて
 語学留学のおかげで不器用ながらも会話には困らない。でも、学校で習ったファッションに関する知識は基本的な物過ぎてリズの手がけるような本格的なコレクションでは全く役に立たない。フランスに来て語学留学もした。ファッションの専門学校にも通い、それなりの見識も少しは習っている。

 でも、学校で習ったことなんか本格的なコレクションの前には何の役にも立たない。こんなはずじゃなかったのにと思うことが現実だった。

 ファッションの学校では辞書を片手に必死に勉強していた。今の方が語学留学の時よりも今の方が必死だった。言葉が分からないとモデルともデザイナーともコミュニケーションを取ることが出来ない。

 コレクションというのは一人で出来るものではないのは分かっていた。デザイナー、モデル、スタイリスト、照明、カメラマンなどのありとあらゆる人とのコミュニケーションが噛みあった時に一つの物が出来上がる。普段は優しいけど現場でのリズは妥協をしないので果てしなく厳しかった。

 ただのバイトとしてではなくスタイリストを目指しての私は要求されることも前とは違った。それがリズが私を本気で育ててくれようというのが私には分かっていた。アシスタントの仕事をしながら、リズの紹介でファッション関係の学校に通うことにした。センスとかは天性のものがあると思う。

 それ以上に最低限の知識は必要だった。今までのように何となくというのでは通用しない。それにリズも妥協はしないし要求は厳しくなる。

「雅。外れてくれる。邪魔」
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