君をひたすら傷つけて
 ただ絵本と違うのは…笑わないこと。

 無口で誰にも心を開かないというクールなイメージを持った彼は最低限のことしか口にはしない。そんな彼が横にいたのにも吃驚したし、いきなり話しかけてきたのにも驚いた。

 人と一定の距離を保ち、リズも何を考えているのか分からないというアルベールが私にいきなり話しかけてきたのだった。驚かない方が可笑しい。

 何か声を出そうと思うけど、何を話したらいいのか分からない。こういう時は今までの語学留学で培ったフランス語で話せばいいのだろうけど、何を話したらいいのだろう。

 何を話したらいいのか分からない私は彼の綺麗な顔に…真っ直ぐに向けられグレーの瞳に射抜かれたように身体が固まってしまった。

「言葉、分からない?フランス語でダメなら日本語がいいかな?落ち着いてみるものいいだろって言ったけど分かる?」

 アルベール・シュヴァリエの言葉にドキッとしてしまう。彼は流暢な日本語を話したのだった。どう見ても、日本語を話すとは思えない容貌なのに綺麗な日本語を話す。

「どうして日本語を?」

「勉強したんだ。発音は大丈夫?久しぶりに話すから自信はないな。発音も聞き覚えなんだ」

「とっても綺麗な日本語です。まさかここで日本語で話しをする人に出会えるとは思わなかったです」
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