君をひたすら傷つけて
「そう。それならよかった。この現場の雰囲気は外から見ると自分が何をするのかが分かるだろ。君のボスはそれを教えたかったんじゃないかな?少し落ち着いたら大丈夫だよって」

 アルベール・シュヴァリエは無表情のまま私を見つめる。射竦めるような鋭い眼光は深いグレーで、ライトの光の陰で、一段と色を増したような気がする。綺麗だと思う反面、何でこんなに冷たい瞳を見せるのだろうとも思った。私を慰めるかのような優しい言葉を零すのに瞳のグレーは凍てついたままで温もりは見えない。

 瞳は輝いているのに硝子のように心を写さないし、何と考えているのか分からない。それにどうして私に声を掛けるのかも分からない。

「なんでそんなことを思うのですか?リズの気持ちはリズにしか分からないと思います」

「そうだね。リズにしかリズの気持ちは分からない。でもね、君がここに来てから仕事が忙しく緊張は高まってきているのに、リズは君のことを気にしている。リズのように自分に仕事に全てを注ぎ込む人が君のことを視線の端から放さない。これがどういう意味か分かる?言葉で教えるのではなく、自分で学び取る力を身に付けて欲しいんだね」

 いきなりの言葉でリズの方を見ると、ちらっとだけ視線が絡んだ。

「ほら、君を気にしてる。羨ましいよ」


 アルベール・シュヴァリエの言葉の端々にリズに対する尊敬の念以上のものを感じさせた。
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