君をひたすら傷つけて
 コレクションは順調に進み最後のマリエのエスコートをしたのはアルベール・シュヴァリエだった。優雅に歩くその様に会場は勿論のこと、嵐の去った控室からモデルもスタイリストも見詰めていた。眩いスポットライトの中で歩いているアルベール・シュヴァリエは圧倒的な存在感を示している。

 名前は知っていた。存在感のあるモデルというのも知っていた。でもここまでの圧倒的な存在感のあるモデルとは思わなかった。大喝采と共に終わったステージにはアルベール・シュヴァリエはデザイナーと共にいて、誰よりも輝いている。眩いくらいに……。

 見透かすような言葉を残して行った彼から目を離すことが出来なかった。

 デザイナーとマリエを着た女性のモデルとアルベール・シュヴァリエが並んでランウェイを歩く。そんな眩さを私は見つめていた。さっきまで傍に居た人は遠い世界の人だった。拍手と何度ものアンコールを重ねてやっとコレクションは終わったのはかなり時間が過ぎてからだった。

 会場のお客さんが出てしまうと私は会場の片付けに入った。控室はモデルが着替えをしていて戦場の様だから、新人のアシスタントなんか邪魔になるだけ。リズが器用に化粧を落としたり、髪を解いたりしているのを手伝いたかったけど私が入るスペースはなかった。

 会場は片付けを終わり、控え室の方も殆どの片付けが終わった。人の通路とは別にある資材の汎用口の辺りが慌ただしい。すっかり着替えも終わらせたモデルも会場を出てゆき、残るのはスタイリストとアシスタントくらいだった。

 終わってしまったのだと思うと寂しい。

 さっきまで熱気に溢れていた会場は解体され、真ん中に設置されたステージさえも無く、床がコンクリート張りの灰色の冷たさだけが広がるだけだった。会場の熱気を思い出すように見つめる私の横にやってきたのはリズだった。
< 288 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop