君をひたすら傷つけて
 長い時間を掛けてのリハーサルが終わると、本格的にコレクションが始まった。それでもリズは私に指示は出さない。私は何をすべきか自分で考えて動く。これでいいのか分からないけど、リズとは一度目が合って、分かるか分からないくらいに頷いた。

 私にはそれだけで充分だった。自分の出来ることを自分で考えてする。指示を待つだけでなく自分でする。それがどれだけの意味を持つかを私は考えた。アルベール・シュヴァリエと話しをすることが無かったら自分を見つめ直すことは出来なかっただろう。

 リズの元に戻ってからも私は焦っていた自分を反省し、何を求められているのかを考えながら動いた。アシスタントは今までもしたことがある。前と違うのは私がこの仕事を本気で自分で身に着けたいと思っていること。

 自分がすべきことは…リズによって私は身体に染みこまされていた。言われなくても分かっていた。そのことに緊張のあまりに気付いてなかっただけ。

 リズのスタイリストとしての技術は素晴らしい。ただ、綺麗だとか可愛いとかではない。デザイナーの作る世界を綺麗に彩る。独特の世界観の中でリズは輝いていた。

 自分が何を出来るとか、出来ないとかではなくて、私に求められているのは技術的のことではなく、リズのようなスタイリストとモデルが動きやすいように気を配ることだった。

 でも、それ以上に私はリズの役に立ちたい。
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