君をひたすら傷つけて
「これが一番地味なんだけど、それでも恥ずかしい」

 黒のドレスを着たのも初めてだけど、パンプスですらあまり履いたことはない。

 このドレスを見せられた時も躊躇しなかったとはいえないけど、リズのドレスの中でこれが一番大人しいドレスであったのも事実だった。他のドレスはゴージャスな紫のラメ入りだったり、真紅のドレスは胸のカットが凄まじく、むりやり寄せても足りない胸を晒さないといけない。リズは上手く寄せれば谷間が出来ると言ったけど、それでも大胆すぎた。

 その中で一番地味で大人しく見えたのがこのドレスだった。それでも胸の辺りが寂しくて…何枚もパットを入れた。それでも足りない気がする。スリットは入っているが、それ以外は大人しめなので歩く時に大股で歩かなければ大丈夫だろう。


 黒のドレスを着た私を見るとリズは上から下まで見て、満足げにニッコリと頷いた。


「黒のドレスは妖艶なのに雅が着るとどこか小悪魔的に可愛いわ。化粧は少し濃いめにして、髪もうなじを見せましょう。楽しいわね。まりえを着飾るのとはまた違う楽しさよ」

 いつもは無造作に束ねている髪も結い上げられ、銀の櫛で留められた。化粧はこれでもかと言うくらいに盛られる。マスカラは睫毛の上で層を成していてバサバサという感じだった。肌には細かなキラキラした粒子が塗り込まれている。

 派手なのに素肌のように滑らかに出来ている自分の顔を見ながら凝視してしまった。
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