君をひたすら傷つけて
 パーティ会場のドアから出た中庭の隅に少しだけ一人になれるところを見つけた私は持ってきたワインを手に空を見上げる。空には既に綺麗な月が光を零している。庭に置かれたベンチに座るとホッと息を吐いた。何か食べ物を取ってくれば良かったかもしれないけど、そんな気にはならなかった。

 何も食べない状態で飲んだワインは喉に熱を注ぎながら、ゆっくりと身体を温めていく。ほろ酔いと言う感じが気持ちいいと思った。

 今日はとっても素敵な日だった。

 リズのアシスタントとしてコレクションに参加し、現場の雰囲気を肌で感じることも出来たし、リズの技術を身を持って感じ、そして、ドレスを着て煌びやかな世界に来ている。これは夢だと言っても可笑しくない。スタイリストとしてリズは素敵だった。額に汗を浮かべながら働く姿は綺麗だと思った。

 そして、私は憧れた。リズのようになりたいとリズのような技術を身に着けたいと。

「一人ならお邪魔していい?」

 月を見ながら一人でワインを楽しんでいると後ろから声を掛けられた。

 振り向くと、そこには昼間あったばかりのアルベール・シュヴァリエの姿があった。パーティ用のスーツを着込んだ彼はコレクションの時も素敵だとは思ったけど、こんな風にフォーマルなスーツ姿はまた一段と魅力を増しているように見えた。コレクションのモデルなのだから、この場にいても可笑しくない。

 私が口を開く前に私の横の席に座ると、カチンと自分のグラスを私のワインの入っているグラスに重ねた。硝子の共鳴が静かな庭に響いた。

「見違えたよ。あまりに綺麗で。それにとてもよく似合う」
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