君をひたすら傷つけて
 私とアルベール・シュヴァリエが友達ってありえないけど、それでも友達になりたいと言われて、嫌だとも思わない。友達と言われて断る理由は無い。もしも、これが恋人と言うのなら私は即座に断ったと思う。でも、アルベール・シュヴァリエのいうのは『友達』だから断れないし、月を見ながらワインというのから逃げるのも可笑しい。

 実際に私は彼のことを知らないけど、一緒にいるこの瞬間も嫌いだとは思わない。友達なんかになれるのだろうか?とは思う。友達というのはやはりお互いの立場が同じ時に成り立つ。私はスタイリストのアシスタントでアルベール・シュヴァリエは将来有望なモデルで友達というのが成り立つとは思えない。

「これからもよろしく。雅」

 アルベール・シュヴァリエの綺麗な微笑みを見ながら私は言葉を失っていた。その微笑みにも吸い込まれるようだった。私の手にあるグラスに自分の持っているグラスを重ねると、グラスの中に入っている赤いワインを飲み干す。その姿は月明かりの下で美しく眩かった。

「今日のコレクションは疲れたよ」

「そうですか?」

「パーティも嫌いじゃないけど、今日は自分のベッドが恋しい。今日は大事なコレクションだったから失敗したくなかったんだ。緊張した」

「そうは見えませんでした。ちらっとしか見てませんが、凄く堂々と歩いてました」
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