君をひたすら傷つけて

止まらない時間

 私とアルベールの時間は緩やかで優しいものだった。一緒にいると安心するし、自分が大事にされているのも分かる。仕事の終わりに待ち合わせをして出掛けることが増えてきて、それも楽しいと思いだしていた。義哉を失った悲しみはまだ癒えないのに、それでもアルベールとの時間は楽しいと思う。

 仕事が終わって疲れた時に会いたいと思うこともあった。学校の友達にはアルベールとのことは公認のようになっていて、ただの友達とは言えないくらいに親しい。

 かといって恋人ではないところが私の不器用なところだった。学校の友達は私が分からないらしい。恋は楽しんだ方がいいと。

「そのまま甘えたらいいのに」

 甘えられたらもっと楽に生きられた。

「アルベールは素敵な人じゃない」

 そんなこと言われなくても分かってる。

「雅は自分に厳しいわ」

 厳しいのではなく不器用なだけ。でも、今は恋は…。

 アシスタントとしての仕事をしながら学校に通う日々は忙しいながらも充実した時間だった。上司としてのリズは語学学校の合間に手伝っていた時よりも厳しかった。何度も何度も厳しく怒られたりもする。コレクションの最中に外されたこともある。

 リズの言っている意味が分かるのにそれが出来ない自分がもどかしく。タイミングが悪いのもある。それでも私は必死だった。今の自分に出来ることをするだけ。そう自分に言い聞かせていた。リズに指示されるのを待つだけでなく、自分から動き出さないといけない時期になっていた。でも、それは口で言うほど簡単ではない。

 指示をされると出来るのに、指示をされないと失敗してしまう自分が情けなかった。
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