君をひたすら傷つけて
 そういって、お兄さんはゆっくりと頭を下げた。職員室に連れてきただけなのに、『お世話』とか言われると困ってしまう。ただ話しながらここまで来ただけなのに、スーツの男の人が頭を下げるほどのことではない。


「いえ、あの…。本当に隣の席なだけですから」


 その後の言葉が続かない。


 そんな言葉が続かない私を観察するかのようにお兄さんは見ている、こんなに真剣に男の人の視線を浴びるのは初めてで正直嫌だと思った。高取くんが同じクラスで隣の席だと言っているのに信用してないのだろうか?


「義哉のことをこれからもよろしくお願いします。学校生活が楽しんでほしいと心から思っているんです。周りの方は受験の真っ最中で本当に心苦しいのですが」


「私に出来ることならお手伝いします」


「ありがとうございます」


 お兄さんは初対面だけど私のことをよくは思ってない様な気がしてならない。何も悪いことをしてないし、頼まれてここまで案内しただけなのに、どうしてこんな風に私を見るのだろう?


 必要以上に係わりたくないと思った。それに何を考えているのか全く分からないのが怖いとも思った。


「俺は大丈夫。藤堂さんと一緒に講堂に行って始業式に出るよ。だから兄さんも安心して仕事に行って。学校が終わって教室を出るときもメールする。家についてもメールするから」


 教室を出てメール?家に着いてもメール?どれだけ過保護なんだろ。お兄さんの過保護さは常軌を逸していると思った。
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