君をひたすら傷つけて
 幼稚園児という言葉につい笑ってしまった。確かに高取くんの無邪気さは幼稚園児のようかもしれない。人を疑うことさえ知らないような無垢な瞳は私に向けられていてドキドキしてしまう。高取くんは真っ直ぐに人の目を見る癖がある。ドキドキしてしまうのは私が男の子に慣れないからだと思うけど、それにしても高取くんと話していると胸がドキドキしてしまって煩い。


「それっていいと思う。お兄さんを尊敬しているのって」

「そう?引かない?」

「うん」


 私がそういうと高取くんはホッとしたようにニッコリと微笑んだ。正直、過保護なブラコンをみて驚いたけど、お兄さんは本当に高取くんを心配しているし、そのことを高取くんはよく分かっている。二人の関係がそれでよければいい。私は他人だし…。


「さあ、講堂に行く道を教えて。早く行かないと始業式が始まるね。俺は構わないけど、藤堂さんは遅れたら嫌でしょ」


「うん。出来れば間に合いたい。でも、まだ職員室に教頭先生がいたから大丈夫だと思う」


「教頭先生より先に行かないとね」


 私と高取くんは講堂の方に向かって歩き出した。その廊下を歩く間に高取くんは私にこの高校のことを聞いてくる。自分の通っている高校なのに、色々なことを質問されて考えながら答えていると新たな発見もあったりして、新鮮な気持ちになる。もう少しで卒業なのに自分の学校を新鮮に思うなんて不思議な気持ちだった。


 高取くんがここにいるのは二か月という短い期間。家庭の事情があるのは分かるけどもう少し時間があったら一緒に卒業出来るのにって思った。でも、それは言ってはならないことに思えて私は言わなかった。

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