君をひたすら傷つけて
 廊下には誰も居なくて間に合うかと心配にはなったけど、講堂に入るとまだ生徒たちは立ったままで、まだ始業式は始まってなかった。私はクラスの女子の一番後ろに並び、高取くんは男子の一番後ろに並んだ。並んで間に合ったとホッとしたと同時に前に置かれたマイクスタンドの前に教頭先生が現れた。


「今から三学期の始業式を始めます。一同礼。前から静かに座りなさい」


 そして、座ると同時に始業式を始まった。何度も繰り返されてきた講堂での始業式は退屈で、冬休みの話に三学期に迎える受験の事にまで触れてくる。私は耳に何も入っては来ず、さっきの高取くんとお兄さんの事を思い出していた。


『大事にしているは分かるけど、驚いた。でも、そういうのもあるって思ったんだよね』


 それにしてもこの講堂は異様に寒い。床に座っているから寒さが身体に伝わってくる。私のカイロはダッフルコートの中に入っていて持ってくるのを忘れてしまった。持って来ればよかったと思ったけど今更どうしようもない。とりあえず、この始業式の時間を乗り越えないと何も始まらない。


 それにしても寒い。外よりはマシだけど、とにかく寒い。


 すると横からスッと手が伸びてきて、私の膝の上にポトっと何かが落ちてきた。それは使いかけのカイロで横を見ると高取くんは笑っていて『使っていいよ』と唇が動く。


 寒いのは高取くんも一緒だと思うから返そうとすると、手をポケットに入れてしまう。そして、首をゆっくりと横に振る。キュッとそのカイロを握るとさっきまで使われていただけあって、とても暖かい。


 温もりが手から身体中に広がっていき、心まで温まる気がした。

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