君をひたすら傷つけて
 目の前にいるバーテンが優雅にお辞儀をしてその場を離れると。お兄ちゃんは私の前にメニューを広げるのだった。そこには手書きのメニューが書かれてある。この店はどちらかというと、食事を楽しみながらお酒を楽しむタイプの店なので、メニューもどちらかというとお腹に溜まるメニューが多い。

「お兄ちゃんは何にするの?」

「私はそんなにいらないけど、雅はお腹空いたろ。気にせず好きなものを頼んで食べろ」

「この時間に食べると太る。スタイリストがデブって困る」

「雅は太ってないし、むしろ痩せすぎだよ。日本に居た時よりもかなり痩せている。そんなに痩せていて病気でもしたらどうする。健康が一番だからな。食事は健康の基本だからもっと気を使うように」

 お兄ちゃんは三年前の私と比べていた。

 大学に入ったばかりの時の私よりも今の方がお兄ちゃんが言うように見た目は痩せている。それは別に食べてないわけではなく、毎日の生活が忙しく充実しているから筋肉がついたと言った方が正しい。身体のラインは細くはなったけど体重は変わらない。

 毎日荷物を持って走り回る私の身体は必要な筋肉が付き、その分、脂肪というのは減った。でも、ちょっとだけなのにそう思ってしまう。

 義哉のことがあるから、お兄ちゃんは私に対して健康については煩い位に言う。自分の母親よりも健康に関しては神経質だった。私の心に義哉がいるように、お兄ちゃんの心の中には義哉がいる。
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