君をひたすら傷つけて
「毎日動き回って仕事をしていると運動をしているみたいな感じなの。だから、私は日本にいる時よりも元気だと思う。でも、お兄ちゃん、ありがとう。私のことを心配してくれているんだよね」

 大事にされていると思うからこそ零れるのは素直な心だった。お兄ちゃんといると三年も会ってなかったとは思えないくらいに素直に自分の気持ちを言葉に出来た。義哉が亡くなって本来ならお兄ちゃんと私を直接繋ぐものはない。でも、お兄ちゃんは私に会うためにフランスまで来てくれている。確実な絆がある。

「当たり前だろ。雅はすぐに無理をするから心配だよ。義哉が生きていても同じことを言うと思う。雅はもう少し自分の身体を大事にしろって」

「義哉にも怒られるの。私」

「どうだろ。怒りはしないけど、無茶をしたら、きっと私が怒るよりも怖いと思う。さ、太るとか言わずに美味しいものを食べよう」

 白ワインの入ったグラスがテーブルに届くとそれと合わせたかのように料理が並んでいく。頼んだのは私の希望もあって、どちらかというと野菜中心のものだった。

 お兄ちゃんはテーブルに並んでいく料理を見ながらタンブラーを私の方に差し出した。私も前に置かれたグラスを取り、お兄ちゃんのタンブラーに重ねてから冷たく冷やされたワインは喉を流した。冷たさが流れたかと思うと身体の奥の方から温もりに変っていく。この瞬間が好きだったりする。
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