君をひたすら傷つけて
お兄ちゃんがフランスに来た時に約束を断ってからも全く会わなかったわけではなかった。アルベールとは何度かスタジオですれ違うことがあったけどお互いに仕事が忙しく、あのままになっていた。部屋で一緒に飲もうと誘われたのに、お兄ちゃんの元に走ってしまった私からメールをするのも…なんだか気が引けてしまっていて、私から連絡は取ってなかった。
でも、アルベールのことが嫌いになったわけではない。
『うん。仕事が終わったら連絡する』
『いつものビストロに居るから』
いつもと変わらないメールに私は私を不安にさせた。それは私の中で後ろめたい気持ちもあったから…。
仕事を終わらせてから約束のビストロに行くと既にワインを飲んでいるアルベールの姿があった。仕事の帰りなのだろう。少し疲れたような顔を見せている。でも、その疲れが憂いのような魅惑を掻き立てている。店に入ってきた私を見ると軽く手を振り、ニッコリと笑う。そんな微笑みに誘われるように私はアルベールの横に座った。
「遅くなってごめんね。仕事が終わらなかったの」
時間を約束はしてなかった。でも、アルベールはきっとかなり前から待っていてくれたのが分かっていた。それを言わないのがアルベールの優しさだった。
「そんなのは分かっている。雅が頑張っているのは分かっているから」
そういうと、アルベールは自分の席の横に置いてある紙袋に手を差し込むと、小ぶりなピンクのバラの花束を私に差し出した。
でも、アルベールのことが嫌いになったわけではない。
『うん。仕事が終わったら連絡する』
『いつものビストロに居るから』
いつもと変わらないメールに私は私を不安にさせた。それは私の中で後ろめたい気持ちもあったから…。
仕事を終わらせてから約束のビストロに行くと既にワインを飲んでいるアルベールの姿があった。仕事の帰りなのだろう。少し疲れたような顔を見せている。でも、その疲れが憂いのような魅惑を掻き立てている。店に入ってきた私を見ると軽く手を振り、ニッコリと笑う。そんな微笑みに誘われるように私はアルベールの横に座った。
「遅くなってごめんね。仕事が終わらなかったの」
時間を約束はしてなかった。でも、アルベールはきっとかなり前から待っていてくれたのが分かっていた。それを言わないのがアルベールの優しさだった。
「そんなのは分かっている。雅が頑張っているのは分かっているから」
そういうと、アルベールは自分の席の横に置いてある紙袋に手を差し込むと、小ぶりなピンクのバラの花束を私に差し出した。