君をひたすら傷つけて
 しばらく部活をしている下級生を見ていて、時計を見ると教室を出てから十分が過ぎていてどうしようかと思った。きちんとした約束はしてないけどここに来るような気がする。


「高取くん。来るのかな?」


 そんなことを思いながら渡り廊下の窓から外を眺めていると、朝見た鉛色の空はもっと色を濃くしてどんよりと落ちてきそうに見えた。もし、この目の前に広がる空が夏のように突き抜けるような青だったら、この受験期の憂鬱さも軽減できるかもしれない。


 何を考えているんだろうと思う。



 コートのポケットに手を入れるとそこには高取くんから貰ったカイロがあって温かい。単純だけど、私はこの温もりに癒されていた。もう帰ろうかなって思った時だった。教室からの廊下を高取くんはやってきて、私を見つけると嬉しそうに微笑んだ。


「ごめん。遅くなって。でも、待っててくれて嬉しい」


「うん。放課後に案内するって約束したから」


「でも、時間も場所も決めてなかったのに来てくれて嬉しいよ」


「約束したから」


「そうだね。じゃあ、行こうか」


 既に下校時間を過ぎているので人は疎らだったけど、一緒に歩いていて高取くんに迷惑を掛けるのが嫌で私は一番教室から遠い教室から案内することにした。そこから順に案内していけば最後は昇降口に辿りつく。それが一番歩く距離が短く効率がいいと思った。


「校内案内とかしたことないから説明上手くないけどいい?」


「一緒に校内を歩いてくれるだけで十分だよ」

< 39 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop