君をひたすら傷つけて
「それならよかった。今日は本当に助かったと思っている。分かりやすかったし楽しかった」


 そう言ってくれたけど心なしか高取くんの顔色が悪くなっているように見えた。話しながらずっと歩いていたから疲れたのかもしれない。慣れない場所で緊張している状況だから、疲れも倍増するのかもしれない。もう少し気を使えばよかった。


「大丈夫?顔色悪い気がするけど」


「そう?大丈夫だよ。さ、そろそろ帰ろうか。駅まで送るよ」

 
 そう言ってニッコリと笑うから私も何も言えなくなった。高取くんを見ていると笑っているから見間違いだったのだろうかと思ったけど、そうは見えなかった。


「明日は早速音楽があるから、音楽室で授業かな?」


「多分。みんな受験で疲れているから鑑賞だったら寝ちゃうかも」


 そんなことを笑いながら話していると、校門を出たすぐ傍に真っ白な車が停まっていた。そして、校門から出てきた高取くんと私を待っていたかのようにドアが開いた。仲から出てきたのは高取くんのお兄さんだった。高取くんを見つめる顔は真剣そのもので鋭い視線だった。


「メールしろって言ったよな。心配するだろ」


 静かに響く声には怒気を含んでいる。その視線は高取くんに注がれていて私は蚊帳の外だった。高取くんのお兄さんの視線の端にも入ってないようで、私は居心地の悪さを感じた。


「遅くなるってメールしたよ。高校の初日なんだから友達とも話したかったし」


「転校初日から遅くなったら心配するだろ。それが分からない義哉じゃないだろ」


「ごめん」

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