君をひたすら傷つけて
「うん。大丈夫。でも、そんなに美味しい料理は出来ないから期待しないで」

「雅が作ってくれるだけでいい。本当にバケットにハムを挟んだだけでいいから」

 アルベールが心配しているのは料理のことじゃない。そんなのは私にも分かっている。このフランスで男の人が一人で暮らしている場所に行くということは全て受け入れるということに他ならない。

「そんなに上手ではないけど、まりえに習ったから大丈夫。多分」

「楽しみにしてる。でも、無理だと思ったら連絡してくれたらいいから」

「ありがと」

 アパルトマンまで送って貰って、そして、触れるだけのキスをしてからアルベールは帰っていった。そして、自分の部屋に入ると今日もリビングには明かりがなかった。そして、一人でベッドに入っても中々寝付くことが出来なかった。

 アルベールの誕生日の朝、妙に早く起きてしまった私がリビングに行くとそこにはリズの姿があった。昨日の夜はまだ居なかったのに今は居る。仕事が忙しいと言っていたからきっと帰ってこないだろうと思っていた。

「おはよう。リズ。帰ってきたの?」

「おはよう。雅。帰ってきたのはついさっきよ」

 リズが居るというだけでこんなにも嬉しいのはこの頃朝を一人で迎えていたからだった。

「仕事はどう?」

「順調よ。思ったより最初は手間取ったけど、予定通りに事務所を開くわ」

「さすがね」

「でも、これからが忙しくなる。それと、今日はアルベールの誕生日よね」

「ええ。食事を一緒にすることになってる」

「今日は帰宅禁止だから」

「え?」

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