君をひたすら傷つけて
「ありがと。雅。それと、明日でいいから大事な仕事の話があるの」

 私はリズの会社で働くスタッフである。友達という関係ではあるけど、仕事の面では一線を引いている。仕事に関しては甘えないし、リズも甘やかすことはない。

「仕事の話なら今、聞く」

「今の雅に話してもね。落ち着かないでしょ。今日はアルベールに何を作るつもりなの?」

 仕事のことが気になるけど、余裕のない私はリズの言うとおりにすることにした。そして、今日の料理は悩んだ。

「仕事の話は明日聞く。今日の料理はまりえから教えて貰ったシーフードドリアにしようと思うの。どう思う?」

 まりえに習った中で、一番美味しいと思うものと思ったけど、アルベールの口に合うのかと思うと躊躇した。でも、何度考えてもそれしか浮かばなくて無難のものを選んだ。

「いいと思うわ。新鮮な海鮮を使うと物凄く美味しいしワインにも合うと思う」

 いきなり和食でというのもアルベールの好みが合うとは限らない。少しでもアルベールに喜んで欲しい。そう思う。

「だといいけど」

「雅が頑張って作るということに意味があるのよ。そろそろ用意しないと。ここまで迎えに来るの?それともどこかで待ち合わせ?」

「迎えに来てくれる」

「それなら安心ね。じゃあ、私はそろそろ仕事に行く。まだ、仕事残っているし」

 ソファに置いているジャケットをふわっと羽織ると綺麗な微笑みを見せた。
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